家庭を中心とした英語学習に本腰を入れて着手するにあたり、実践で試行錯誤しながら、色々な書籍も読んでいる。
廣津留さんの本も何冊か読み、教材については店頭で手に取ったり、買ったり、実際に使ったりしてみた。
今回は、以前に出版された書籍の感想と、今夏の我が家での実践結果の記録。
『英語で一流を育てる 小学生でも大学入試レベルがスラスラ読める家庭学習法』
廣津留真理・著/ダイヤモンド社(2017/5/24)
1. 総評:★★★☆☆
『世界に通用する一流の育て方(2016/9/5)』を読んだときに、家庭教育について、自分の中のモヤモヤをスッキリさせてくれたり、参考になる考え方が多かった。
また、著者が今年夏に立て続けに著作を出した関係で、その(本&著者の塾イベントの)宣伝を兼ねたようなネット記事も、よく目にしたので、英語学習に特化したひろつるメソッドの本を手に取った。現時点での正直な感想は、参考になる部分もあるけれど、実践においては、子どもの性格によるな〜、というもの。
※我が家の実践結果はこの記事の最後に書いている。
この取り組み方が、そのまま使える家庭(子ども・親の双方がハマれる家庭)は、そのままマニュアルとして使えるだろう。けれども、我が家のように、息子の反応を見ながら調整が必要だったり、他の学習方法を試した方が良さそう、という家庭も多いだろう。まぁ、教育には唯一の正解はないし、子どもや親の性格によっても、取り組みやすさは違うだろうから、当たり前だけれども。
2. 『英語で一流を育てる』の概要
第1章の導入部分で、「なぜ一流は家庭で英語を学ぶのか」(*「一流」とか「ハーバード」という言葉が本書の全編を通して何度も出てくるのには、ちょっと苦笑い。。。)、その効用などが触れられている。
前半はハーバード生を引き合いに、優秀な家庭では「子どもに何でも挑戦させる、勉強を強制しない」などの一般論。
中盤で、2020年度からの小学校における英語の教科化について触れるが、著者によると、「現行制度では小3〜小6までの4年間で覚える単語数は600語程度。中身の薄い、現在の中学1年間分の英語を先取りするために小学校の大事な4年間を費やすとは、もったいない」とのこと。これには、まったくもって同意である。そして、その一番の原因は、「12歳以下の子どもたちに、きちんと英語を教えるメソッドが存在しない」と著者は主張している。英語学習スタートの年齢を引き下げたはいいけれど、小さな子供たちにどうやって教えたらいいかわからないからだ、と。
そして、導入部の終盤で、ひろつるメソッドのさわり(著者の教え子たちの家庭での英語学習の取り組み方)を一部紹介している。
第2章〜7章は、具体的な英語学習の進め方やコツ、考え方などが示されているので、マニュアルとして使える。
下記「参考にしたいこと」では触れないが、単語暗記と同時並行で文章の暗唱や英作文練習のためのハーバード生が書いた英作文の暗記、も提案している。実際、そのようなことができる小2の教え子の事例も挙げているが、こればかりは、それができる子(=興味を持って、あるいは素直に取り組める子)とそうではない子に分かれるだろうな、という印象。うちの息子は、現時点では単語暗記だけでも飽きてしまうので、それ以上はパス。
3. 参考にしたいこと
「論理国語」を先取りした「日本語B」
「論理国語」とは、2020年の新学習指導要領で 高校生の国語科に登場する教科。国際社会でも通用する論理的エッセンスを持った日本語で、英語を身に付けるための日本語とも言える。本書では、従来の曖昧な日本語を「日本語A」、国際社会に通用する論理的な日本語を「日本語B」と著者が名付けている。
日本語Bのポイントは3つ。
- まず結論:言いたいことを先に言う
- 必ず理由:論理的な「なぜなら」
- 事実描写:事実と意見を明白に区別して伝える
<例>
「手伝ってもらえませんか?」への答えとして「すみませんが、手伝えません。なぜなら、先約があって今から外出するためです」
→よくある日本人的な答え方は「今から約束があって、今すぐ出ないと遅れてしまう。なので、無理なんです。」最後まで待たないと手伝いの可否がわからない。
まず結論や主張を言ったら、言いっぱなしにせずに必ず裏付けの理由を続ける。
「事実描写」とは、個人の意見や感想、想像・予想を含まない、見たままの客観的な事実を伝えること。
家庭での日常的な親子の会話においても、「理由」を意識させると、子どもは自然と「日本語B」で考え、表現する習慣をつける練習になる。
1日たった5分のらくらく単語暗記法
第4章「1日たった5分のらくらく単語暗記法 ー 英語は単語が9割」では、 著者の教え子たちが園児や小1が週100語覚えられる、暗記嫌いの年長さんが2年で4000語をマスター、という事例も挙げている。具体的な暗記法を開示しているが、下記の内容。
- 極意1:音声に合わせて音読する ー 口と耳で覚える
- 極意2:「英語→日本語」を交互に音読する ー 体で覚える
- 極意3:書かずに「なぞり読み」する ー 目で覚える
ポイントは、”大好きなお母さんと一緒”だからできる、ということらしい。
我が家の実践時を振り返れば、幼児期の方が素直に取り組んでくれるかも??
上記の極意1と3は同感であり、実践中。
ただ、極意2の英語と日本語を交互に音読して体で覚えるというのは、未就学児にしか効かないものだろうか?日本語訳をしてしまわないだろうか?というのが、モヤモヤしていた。
少し長いが、以下はp.150からの引用。
「apple - りんご」「park - 公園」「do - する」「like - 好き」ー 英語と日本語を交互に音読するのが、この単語暗記法の最大のポイントです。
これをテンポよく行うことで、英単語「ひとつ」と日本語「ひとつ」の組み合わせを、意味や和訳ではなく、リズムで覚えることができます。
「『日本語ー英語』の”交互音読”をすると、『apple - りんご』という組み合わせを”そのまま”覚えてしまうのです。次からは『apple』を見るだけで、『アップルは日本語でりんごだな』と頭の中で訳さなくても、自然に『りんご』と出てくるようになる。体が単語を覚えてしまうんです」とは、すみれの言葉。すみれは幼い頃、この方法で圧倒的な単語力を身に付けました。
英語と日本語の交互音読はシンプルですが、世界に通用する暗記法なのです。
ちなみに、本書では教材として『英検5急 でる順パス単』(旺文社)を使っている。まだ著者のオリジナル教材が出版される前の本だからであろう。2020年9月18日現在は、著者オリジナルの教材が3冊出ている。
『1日5分で身につく!小学生の英語』
廣津留真理・著/ナツメ社(2020/6/4)
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『英語ぐんぐんニャードリル ひろつるメソッド 最短最速!ゼロから一気に中2終了』
廣津留真理・著/講談社(2020/7/2)
『ひろつるメソッド 子ども英語 Don Don English! 英検5級対応CD付き』
廣津留真理・著/主婦の友社(2018/5/30)
「超・音読法」3つの技法
単語をらくらく暗記する習慣がついたら、次は圧倒的に大量の英語長文を音読で読む。
ポイントは「文法無視、和訳しない、ざっくり読む、ひたすら音読」
「和訳しないでざっくり読む」というのは、いきなり英語で読んでも、何が書いてあるか理解できないのは苦痛なので、絵本であれば、先に日本語と絵でストーリーをおおまかに把握してから、英語を読みましょう、ということ。
音読の3つの技法とは、以下の通り。
- リピート:英語の音声を聞いた「あと」に音読で再現
- シャドーイング:英文を見ないで、聞こえた英語を「即座」にあとについてマネして言う。文字通り、影のように音声のあとについて音マネをする。
- オーバーラッピング:英文を見ながら、聞こえてくる英語の音声と「同時」に音読をする。
これらの技法を実際に行っている動画も用意されている(下記「参考情報」参照)
ちなみに、私自身、若かりし頃に通訳者を目指して勉強をしていた頃はシャドーイングをひたすらしていた。通訳者養成学校では、必ず取り組む技法。リスニング力とスピーキング力が確実に上がる。
1分間スピーチ・トレーニング:15秒で考え、45秒で発表
自分の考え方を15秒でまとめ、45秒で「日本語で」話す。
「結論が先」「必ず理由」「事実を描写」という論理的な「日本語B」の練習でTOEFLスタイルの「1分間スピーチ」に慣れておく、というイメージ。
出題者がお題を振り、回答者は15秒間考える。「用意、スタート!」の掛け声で45秒間のスピーチ開始。時間は、ストップウォッチできっかり計る。時間が余ってもオーバーしてもOK。
<お題の例> ※それぞれ、理由も合わせて発表する。
- 一番好きな食べ物・曜日・先生・遊び
- 夏休みにやりたいこと
- 田舎と都会のどっちが好き?
- 大人になったらなりたいもの
- 100年後の世界はどうなっていると思う?
小学3年生以上は、自分の発表内容をノートに書いて整理要約する力もつける。
4. 参考情報
本書を世に出すに当たって、著者がものすごく力を入れていたことは、動画や音声データが用意されているところからも伝わってくる。
ハーバード生によるお話の朗読など https://dirigo-edu.com/book/
歌の動画:School Trip Song (遠足に行こう)https://dirigo-edu.com/movie/
暗記法&超・音読法の3つの技法 https://dirigo-edu.com/reading/
5. 我が家での実践結果
最後に、我が家での実践結果。
今年夏、発売されたばかりの「ひろつる教材」を使って、息子も「ひろつる英語学習法」に挑戦してみた。その教材の冒頭には、子どもが進め方を理解できるような漫画までついている。店頭で息子と読んでみて、やってみる!と本人が言うので、挑戦を決めた。
実際にやってみると、<極意2>の日本語に変換しながら英単語を覚えていく過程で、5つめの単語くらいで飽きてしまい、時々イライラしていた。どんなに褒めて調子に乗せようとしても、調子に乗れない。息子には「英語→日本語」を交互に音読、という進め方がしっくりいかなかった。脳に英語が直接入り込むのではなく、一度和訳をしてしまって、その効率の悪さ(?)にイライラしているのか?あるいは、ひろつる教材の単語リストのグルーピングが覚えにくいのか?そういう印象だった。
お風呂時間にリラックスしながら、牛乳パックの裏側に書いた単語を眺めてみる、というのもやってみた。一応、我慢してやっている間は、覚えた単語数は確実に増えていった。しかし、とにかく”やらされ感”いっぱいで、結局、2週間も持たなかった。
そういえば、「ひろつるメソッド」ではないが、英会話のフレーズを暗記するとか、Picture Dictionary で単語を絵と一緒に覚える、というのも、息子はあまり好きじゃなかったな、と思い出した。一時的には取り組んでも、継続させようとすると、”やらされ感”がいっぱい出てくる。
どうやったら、息子が面白がって英語学習を続けられるようになるだろう?という逆転発想で、考えてみた。
日本語の回文や韻を踏んだ詩、ダジャレなど、言葉の響きを面白がる息子。例えば、電車移動中だと「○○しい」で終わる形容詞(嬉しい、悲しい、恐ろしい、寒々しい、など)を交互に言い合って単語数を競う遊びをやりたがる。あるいは、五・七・五の標語のリズムが好きで、自分でも色々な標語作り遊びをする。
それなら、「音の響きを楽しむ」を入り口に英語学習をできないだろうか?で、たどりついた結論が、「sad / bad/ mad / dad 」「cake / rake / bake / lake」のように韻を踏みながら単語を繰り返せば楽しめるかも?だった。それで、フォニックスを改めて徹底することにした、というのが先日のブログ。
息子については、「音の響きを面白がる→アルファベット表記を確認(フォニックス&単語暗記)→覚えた単語を使った文章を読む」という方法で、ようやく英語学習が軌道に乗った。また、街中の英語看板が、意味が分からなくても読める、ということが自信になり、英語に興味を持つようになった。
子ども一人ひとりに個性があるように、小学生ともなれば、学習の仕方にも個性があるのかもしれない。そう考えさせられる経験だった。